数年前、長年お付き合いのあるお客様からご相談を受けました。
このお客様は、大阪府郊外の私鉄沿線にお住まいで、沿線から大阪市内にかけて
小規模な戸建てや土地を複数所有されています。
これらの不動産は、ご両親が戦後から積極的に購入してきたもので
現在はお客様が自分で管理しています。
お客様はサラリーマンとしての業務と両親から引き継いだ不動産管理を両立していますが
長年賃料を据え置いてきた物件がいくつかあります。
ある日、賃料の値上げを電話で提案したところ
借主から「直接話したい。家主としてやるべきことをせずに
賃料の値上げとは何事だ。一度お会いしたい」と声を荒げていたようです。
そこで、この家主さんは一人での交渉は不安だと弊社に同行を求められたのです。
借家人に修繕費を持たせるデメリットとリスク
今回問題となった物件は、JRの駅から徒歩10分の住宅街にある
戦後間もなく建てられた一軒家です。
立地としては閑静な住宅街で良いのですが、建物は外観からは老朽化が進んでいます。
この物件は、この家主さんの両親が利便性が良いとのことで
30年ほど前に入居者がいることを承知で買い取ったとのことです。
入居者が内装をきれいに…2階も無断で増築
この借家の中に家主さんと一緒に入って行ってビックリ!
入居者は借主と若夫婦と孫の3世代での生活で、内装は入居者が個人負担で
リフォームを行い、リビングやキッチン、浴室なども綺麗に改装されています。
かなりの内装費をかけているようです。
入居者にとっては、借家を借りていると言うより持ち家感覚で
将来にわたっても子や孫の代までここで生活を続けたいという意向のようです。
さらに、驚いたことに2階部分には一部増築が施されており
この増築部分の固定資産税が借主に請求され、長年にわたり借主が負担しているとのことです。
この家主さんは長年の間、この借家の外観すら見ておられなかったようです。
賃貸契約書も家主とは交わしておらず、長年にわたって賃料の値上げはなく
相場の1/3の格安賃料が続いております。
その代わり、修繕費は借主が負担するという「暗黙の了解」があったようです。
しかし、今回の家主からの突然の値上げ提案に対し
借主から「修繕費を負担しているのに値上げとはどういうことか」という怒りの反応があり
借主は無断で行った改装や増築についても、家主の同意を求める必要がないと主張しました。
もし、家主さんに相続が発生したら?
この家主さんは60歳を超えておられ、まだお若いのですが
仮にもし、ここで相続という問題が起こった場合、どうなるのでしょうか?
この家主さんには2人の社会人となった娘さんがおられます。
将来、この物件をこの娘さん2人のどちらかが引き継いだ場合
この口達者な借家人とのやりとりについては相当な労力と時間とを要するでしょう。
かなり精神的な疲労と不安が続くことでしょう。
建物の不具合があるたびに連絡を受け、それに対応を余儀なくされることも予想できます。
しかし、それに見合うだけの賃料の値上げはなかなか応じてもらえない可能性が強く
まさに『労多くして功少なし』です。